弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

書面作成の技術

1  文章作成の心構え

    中小企業法務研究会  訴訟戦略部会  弁護士  笹山  将弘 (2014.03)

1   文章には力がある

  文章には力があります。裁判官を説得する力です。裁判官の心を動かす力です。実際に、文章の巧拙が訴訟の勝敗を決することは少なくありません。
  我々弁護士は、文章の力を信じる必要があります。文章の力で勝つのだという意識を、強く持つ必要があります。その意識がなければ、どんなに素晴らしい文章作成技術を学んでも、人を説得する文章は書けません。人の心を動かす文章は書けません。文章には、技術を超えた力があるのです。

2   目的を意識する

  文章作成にあたっては、目的を意識する必要があります。
  訴訟においては、文章作成の目的は裁判官の説得です。しかし、これでは目的の意識としては不十分です。より厳密に目的を意識する必要があります。 事実経過を明らかにしたいのか、証拠の価値や評価を明らかにしたいのか、法律の解釈を明らかにしたいのか。その文章の厳密な目的を意識する必要があります。
  なぜ、厳密な目的を意識する必要があるのか。それは、目的に応じた書き方があるからです。例えば、事実経過を明らかにするのであれば、出来事を時系列で述べる等、物語調で書くのがわかりや すいでしょう。証拠の価値や評価を明らかにするのであれば、証拠に価値があると考える根拠を、項目分けして列挙するのがわかりやすいかもしれません。

3   読み手を意識する

  訴訟に限定すると、文章で説得したいのは裁判官です。裁判官がわかりやすい文章、読みやすい文章を意識する必要があります。
  裁判官は多忙です。多忙な裁判官が、時間をかけずに一読してわかる文章でなければなりません。冗長な文章は、逆に裁判官の理解を妨げることがあります。
  また、裁判官は当事者の文章を批判的に読みます。文章の不足を補ってはくれません。善意解釈もしてくれません。法律用語が正しく使われているか、誤字脱字、引用の正確さ等にも厳しく目を光らせています。ただでさえ批判的に読まれる文章です。多忙でもあります。そんな中で法律用語の誤り、誤字脱字が連発する文章を読んだ裁判官が、その文章に頂く印象はどのようなものか。文章を書いた弁護士に抱く印象はどのようなものか。想像に難くありません。