弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

アジア地域の労働環境比較@  

〜インドネシア・タイの労働法を中心に

    中小企業法務研究会  事業再生部会  弁護士  福田 大輔 (2014.05)

インドネシアは労働者の権利が強いのに対し、タイでは労働者の権利は比較的未成熟です。 各国の特徴を充分に把握し、対応することが必要です。

インドネシア
  • 原則:期間の定めのない契約

    3ヶ月以内の試用期間以外は正当な理由なく雇用を終了させられない。雇用契約の終了を回避するために、使用者、労働者、労働組合及び政府があらゆる努力をすることを基本原則。解雇には、労働裁判所の決定が必要。懲戒解雇でも解雇手当必要。アジアで最も解雇が困難な国の一つ。

  • 例外:期間の定めのある契約

    短期間で終了する等、一定の種類、性質または一定の期間内に完了する業務に限定。最長2年で1回1年の延長が可能。

  • 最低賃金  ※州又は市県ごとに異なる。

    ジャカルタ:1ケ月約244万ルピア(約2万1050円)
    バリ州:約154万ルピア(約1万3285円)。2年前に比べて約60%上昇。

  • ストライキ、ロックアウト

    それぞれ権利として法定。実施方法も定められている。

労働者の権利は高い。イスラム系住民が多く、家族を大事にすること等の配慮が必要。

タイ
  • 雇用契約とその終了

    120日以上の勤続者には、勤続年数に応じた解雇手当の支給が必要(ex.120日以上1年未満:退職時賃金の30日分・10年以上:退職時賃金の300日分)。1給与期間以上前に文書での事前通告か、同期間の賃金相当額の支払いが必要。 整理解雇は、60日以上前に通知が必要。また、6年以上の勤続者には、解雇手当に15日以上の賃金相当額の解雇手当の上乗せが必要。

  • 最低賃金

    2012年から全国一律になり、2013年1月から1日300バーツ(約950円)。2011年の水準と比較すると約40%〜88%上昇。

  • 労働組合

    未だ未成熟で、盛んとは言えない。

日系企業とタイ人労働者との関係は概ね良好。しかし、人材の流動性が高く、労働力不足が恒常化している。特に、中間管理職や高学歴者は賃金水準が高くなっている。2013年5月の中間管理職の年間実負担額は、約285万円。